
公開日:2026年9月27日
会議のあとに、メモや配布資料をもとに議事録をまとめるのは、意外と手間のかかる作業です。AIに整理を任せたくなりますが、「この会議メモを議事録にして」と頼んだだけでは、読みやすい文章にはなっても、誰が何をいつまでにやるのかが分からない議事録になってしまうことがあります。
この記事では、AIに議事録を整理してもらう前に、どんな項目を決めておくとよいか、そのままコピーして使えるテンプレート、依頼文の書き方、そして出力を確認するときのポイントを、初心者向けの手順としてまとめます。
「議事録にして」だけではうまくいかない理由
会議のメモは、話した順に書かれていることが多く、決まったことも、ただ話題に出ただけのことも、同じように並んでいます。ここに何の指定もなくAIへ渡すと、次のような状態になることがあります。
- 決定事項と、単に話し合っただけの内容が混ざる
- 担当者や期限が抜けている、または曖昧なまま文章に溶け込む
- 会議のたびに構成が変わり、あとから探しにくい
- メモに書かれていない内容が、もっともらしく補われる
原因の一つは、AIの性能よりも、「どんな形に整理してほしいか」が事前に決まっていないことにあります。議事録は文章の出来よりも、あとから読んで動ける情報が揃っているかが大切です。だからこそ、AIに頼む前に、必要な項目と形を決めておく手順が役に立ちます。
先に決めておきたい議事録の項目
議事録に載せる項目は、会議の目的によって変わります。次の表は、よく使われる項目の例です。すべてを毎回入れる必要はありません。
| 項目 | 書くこと | 特に役立つ場面 |
|---|---|---|
| 会議名・日時・参加者 | 何の会議か、いつ、誰が出たか | 後日の振り返りや共有 |
| 議題 | その会議で扱うテーマ | 議題が複数ある会議 |
| 決定事項 | 会議として決まったこと | 方針や進め方を決める会議 |
| 主な論点 | 話し合われた意見や検討内容 | 結論が出ない検討会議 |
| 未決事項・保留 | まだ決まっていないこと、確認が必要なこと | 宿題が残る会議 |
| 担当者・期限 | 誰がいつまでに何をするか | 作業が発生する会議 |
| 次のアクション | 会議後にやること | 定例会や進捗確認 |
| 次回確認事項 | 次の会議で確認したいこと | 継続的な打ち合わせ |
たとえば、情報共有が中心の会議なら「決定事項」よりも「共有された内容」を厚くするほうが役に立ちます。逆に、作業の割り振りが中心の会議なら「担当者・期限・次のアクション」が中心になります。会議の目的に合わせて、必要な項目だけを選ぶのがコツです。
AIで議事録を整理する8つの手順
次の順番で進めると、AIへの依頼も、出力の確認も、迷いにくくなります。
1. 議事録の用途を決める
議事録を何のために使うのかを最初に決めます。参加者への確認用なのか、欠席者への共有用なのか、あとで作業を進めるためのタスク一覧なのかによって、必要な項目と細かさが変わります。
2. 会議前に残す項目を決める
先ほどの表を参考に、この会議の議事録に残したい項目を選びます。会議が始まる前に決めておくと、メモを取る段階から「決定事項」「担当者」「期限」を意識して記録しやすくなります。
3. 会議中の素材を集める
手書きメモ、入力したテキスト、配布資料、チャットの記録など、議事録のもとになる素材を手元にまとめます。素材が乏しいと、AIに整理させても情報は増えません。あとで「誰がいつまでに」を確認できるよう、担当や期限が話題に出たときは、その場で一言でもメモしておくと後が楽になります。
4. AIに整理させる項目を指定する
素材を渡すときに、どの項目で整理してほしいかを具体的に伝えます。項目を指定せずに「議事録にして」と頼むより、確認しやすい形に近づきます。
5. テンプレートに沿って出力させる
次の章のテンプレートを渡し、この形に沿って整理するよう指定します。毎回同じ形にそろえることで、あとから読み返したり、他の会議の議事録と見比べたりしやすくなります。
6. 元のメモ・記録と照合する
AIが整理した内容を、元のメモや資料と突き合わせて確認します。読みやすく整っているほど、そのまま信じたくなりますが、照合を省略しないことが大切です。
7. 決定事項・担当者・期限を人間が確認する
議事録の中でも、決定事項、担当者、期限は、間違っていると実務に影響しやすい項目です。AIの出力を最終版とせず、会議に出た人、または内容を把握している人が確認します。
8. 必要な相手へ共有する
確認が済んだら、必要な相手に共有します。共有先や共有方法は、所属する組織のルールに従ってください。
使い回せる議事録テンプレート
次のテンプレートは、多くの会議でそのまま使える基本形です。会議の目的に合わせて、不要な項目は削り、必要な項目を足してください。
会議名: 日時: 参加者: ■ 決定事項 - ■ 主な論点 - ■ 保留・確認事項 - ■ 次のアクション - 内容: 担当: 期限:
ポイントは、「決定事項」と「保留・確認事項」を分けておくことです。この2つを別の欄にしておくだけで、話し合っただけの内容が決定事項として扱われる事態を防ぎやすくなります。
依頼文の例(コピーして使えます)
次の依頼文は、この記事の考え方を一つにまとめたものです。下の実例でも、この依頼文を基にした依頼を使いました。
次の会議メモを、参加者に確認してもらうための議事録として整理してください。 【出力の形】 会議名、日時、参加者、決定事項、主な論点、保留・確認事項、次のアクション(内容・担当・期限)の順に、箇条書きでまとめてください。 【ルール】 - 「決定事項」には、メモから会議として決まったと読み取れる内容だけを書いてください。「方向」「かも」「?」などの表現は、決定事項ではなく保留・確認事項に入れてください。 - 元のメモに書かれていない内容は補わず、担当者や期限などが不明な項目は「未確認」としてください。 - 元のメモにある表現をできるだけ残し、推測で言い換えないでください。 【会議メモ】 (ここにメモを貼り付ける)
この依頼文は、読み手(参加者が確認する用途)、出力の形(項目の順番)、ルール(決定事項の基準、補わない、元の表現を残す)の3つを決めています。依頼の基本的な組み立て方は、プロンプトの基本で整理しています。
実例:実際の定例メモで試した結果(2026年10月12日)
ここからは、運営者が実際に書いた定例会議のメモで、上の依頼文を基にした依頼を試した結果です。
検証の条件
- 内容:運営者が実際に書いた定例会議のメモ1件です。固有名や事業の細かい内容は、一般化しています。
- 使ったもの:ChatGPTです。1回目の出力を確認し、運営者が修正を指示して、2回目の出力を得ました。
- 記録していないもの:モデル名と所要時間は記録していません。
- 範囲:1件のメモ、1回の試行です。他のメモやツールでも同じになるとは言えません。
元のメモ(一般化した抜粋)
10/12 定例 - 有料コンテンツの価格、○○円で出すか未確定 - 集客導線は売上データが出るまで保留 - 自動生成機能は止めたまま。再開するかは未定 - 外部サイト接続の制約により、当面ローカル運用 - 案件応募、まだ0件。まず1件出す - 2週間のテスト施策、開始日を決める - 投稿ログの入力、毎日やる - 次回水曜(10/14)
初回の出力(一般化した抜粋)
決定事項 - 外部サイト接続の制約により、当面ローカル運用とする。 - 案件応募は、まず1件応募する。 - 投稿ログ入力は、ウィザードで毎日行う。 - 次回は水曜(10/14)。 保留・確認事項 - 有料コンテンツの価格を○○円にするかは未確定。 - 集客導線は、売上データが出るまで保留。 - 自動生成機能は止めたままで、再開するか未定。 (ほかの項目は省略) 次のアクション - 内容:案件応募でまず1件応募する 担当:未確認 期限:未確認 - 内容:投稿ログをウィザードで入力する 担当:未確認 期限:毎日 (ほかのアクションは省略)
運営者の確認で分かったこと
よかった点は、次のとおりです。
- 未確定の価格を、決まったこととして書かなかった
- 未定の選択(引き継ぎ先の機器など)を、勝手に選ばなかった
- 再開するか未定の作業を、再開すると決めなかった
- メモにない担当者や期限を補わず、「未確認」とした
- 記事にするか未決の件を、決定事項にしなかった
気になった点は、次のとおりです。
- 「まず1件応募する」「投稿ログを毎日入力する」が、「決定事項」と「次のアクション」の両方に出ていた
これは事実の創作ではなく、分類と読みやすさの問題でした。出力が全体として間違っていたわけではありません。
修正の指示と、修正後の結果
運営者は、次の修正指示を1回だけ出しました。
元メモにない情報は追加しないでください。 「決定事項」は方針・決定済み事項だけ、 「次のアクション」はこれから実行する作業だけに分け、 同じ内容を重複させないでください。 担当者・期限がメモにない場合は「未確認」としてください。
修正後の出力は、次のとおりです。
決定事項 - 外部サイト接続の制約により、当面はローカル運用とする。 - 集客導線は、売上データが出るまで保留とする。 次のアクション - 案件応募でまず1件応募する 担当:未確認 期限:未確認 - 投稿ログをウィザードで毎日入力する 担当:未確認 期限:毎日 (ほかのアクションは省略) 次回 - 水曜(10/14)
重複はなくなり、担当者と期限は引き続き「未確認」のままでした。担当者と期限を埋めるのは、会議に出た人の役目です。
なお、「集客導線は売上データが出るまで保留とする」を決定事項に置いたのは、「保留するという方針が決まった」という意味です。導線をどうするかという事業上の結論が出たわけではありません。この項目は保留・確認事項に置く考え方もあり、置き場所は読み手によって判断が分かれます。
この実例から言えること、言えないこと
今回の1件では、次のことが確認できました。
- 欠けていた情報(担当者・期限)は補われず、「未確認」として見える形で残った
- 未確定の事項が、決定事項に変わることはなかった
- 初回の分類の重複は、1回の修正指示で整理できた
- 人が確認すべき箇所(分類、「未確認」の項目、保留の置き場所)が見つけやすくなった
一方で、次のことは言えません。
- 他のメモやツールでも同じ結果になること
- 作業時間が短くなったこと(所要時間は測っていません)
- 毎回、重複や補完が起きないこと
短い依頼との比較は、プロンプトの基本の記事の実例にあります。今回の検証では、短い依頼でも概ね使える出力が返ってきました。依頼文で形と基準を決める意味は、出力を間違えにくくすることだけでなく、人が確認しやすい形にそろえることにもあります。
決定事項と議論を混同しない
議事録で特に注意したいのが、「話し合ったこと」と「決まったこと」の区別です。会議では、次のような発言がよく出ます。
- 「A案がよさそうですね」(意見)
- 「来月あたりを目指しましょうか」(提案)
- 「その方向で進めましょう」(合意に近いが、確認が必要な場合もある)
AIは、こうした発言を読みやすく整理するうちに、意見や提案を決定事項として書いてしまうことがあります。議論は決定と同じではありません。元の記録から、会議として決まったと言える根拠があるかどうかを、人が確認してください。判断がつかないものは、決定事項に入れず、保留・確認事項として残すのが安全です。
AIが整理した議事録を確認するポイント
AIが整理した議事録は、元のメモや記録と、人による確認がそろって初めて、共有できる状態になります。AIの出力は、確認前の下書きとして扱ってください。元の資料と照合するという考え方は、長文を要約するときの照合でも解説しています。議事録では、特に次の点を確認します。
□ 参加者の氏名・部署は正しいか □ 決定事項は、元の記録で会議として決まったと言えるか □ 議論しただけの内容が、決定事項に入っていないか □ 保留・未決事項が、決定事項として書かれていないか □ 同じ内容が、決定事項と次のアクションの両方に重複していないか □ 担当者は元の記録と一致しているか □ 期限・日付は正しいか □ 数値・金額は元の記録と一致しているか □ 約束や合意の内容が、強くなったり弱くなったりしていないか □ 元のメモにない内容が補われていないか □ 「未確認」の項目が、そのまま共有されないよう対応しているか
元のメモにない内容を補わせない
議事録で最も避けたいのは、書かれていない担当者や期限が、事実のように埋められてしまうことです。AIは、文章を自然に整えようとするあまり、欠けた部分をそれらしく補うことがあります。
そのため、依頼文に「元のメモに書かれていない内容は補わず、不明な項目は『未確認』としてください。」と入れておきます。「未確認」と書かれた項目は、共有の前に、会議に出た人へ確認して埋めます。空欄や「未確認」が残っていること自体は、失敗ではなく、確認すべき箇所が見える状態です。
録音や文字起こしを使う場合の注意
この記事は、手元のメモや資料を整理する方法が中心で、録音を前提にしているわけではありません。メモやチャットの記録だけでも、同じ手順で使えます。
録音や文字起こしを使う場合は、所属組織のルールや参加者への周知・必要な同意を確認してください。あわせて、その内容を利用するAIサービスに入力してよいかも、事前に確認しておくと安心です。具体的な扱いは会議の内容や組織によって異なるため、迷う場合は、組織の担当部署や管理者に確認してください。
機密情報・個人情報の扱い
会議の記録には、個人情報、顧客に関する情報、社外に出せない業務上の情報、未公開の計画などが含まれることがあります。こうした内容をAIサービスに入力する前に、所属組織の情報取り扱いルールと、利用するサービスの利用規約や設定を確認してください。入力してよいか判断できない内容は、入力しない、または固有名詞や数値を伏せてから使う、といった対応を検討します。サービスごとに扱いが異なるため、この記事では特定のサービスの仕様には触れていません。
整理した議事録を残す
議事録の形が決まったら、その形を保存用のメモとして残しておくと、次の会議で使い回せます。残し方は、AIとの会話を使い捨てにしない保存・再利用の基本で整理しています。
まとめ
AIに議事録を整理してもらうときは、先に用途と項目を決め、テンプレートに沿って出力させることで、使いやすい形に近づきます。そのうえで、決定事項と議論を分け、書かれていない内容を補わせず、出力を元の記録と照合して人が確認するところまでが、議事録づくりの一連の流れです。まずは、次の会議で使うテンプレートを一つ用意することから始めてみてください。

